今回はウエスタンリバー鉄道。
東京ディズニーランドが開園した1983年4月15日から走り続けている最古参のアトラクションです。
アドベンチャーランドにある、ウエスタンリバー鉄道駅を発車。
ウエスタンランドとクリッターカントリーを通過して、再びアドベンチャーランドへ戻ってくるルートを走っています。
※私のポリシーとして、この記事ではインディアンではなくネイティヴ・アメリカンという呼称を用いています。
それは西部を巡る機関車
1848年にカリフォルニアで砂金が発見されると、一攫千金を夢見る開拓者たちがアメリカ西部へ押し寄せ、ゴールドラッシュが到来します。
人口700人足らずだったカリフォルニアは、わずか1年間で10万人以上に。
開拓者たちを運んだのは機関車でした。
1830年に開通した『ボルティモア・アンド・オハイオ鉄道』を皮切りに、1890年ごろまで鉄道建設ラッシュが続きます。
ウエスタンリバー鉄道も、そのブームに乗って建設されたのかもしれません。
✑西部みどころ案内
アドベンチャーランド・ウエスタンランド・クリッターカントリーを通るウエスタンリバー鉄道。
エリアによって、風景も趣を変えます。 では、車窓から見える景色を見ていきましょう。(L)は左側、(R)は右側から見えるものを示しています。
ウエスタンリバー鉄道駅
19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパから入植してきた開拓者たちによって建てられた駅舎です。
木の羽目板にトタン屋根、天井のシーリングファンが熱帯を思わせます。
チケットオフィスは電報局も兼ねていたようで、壁に貼られたカレンダーの日付は1949年6月。
(R)サイチョウ
さて、皆さんは今熱帯のジャングルの周りを走っています。ここには、実にたくさんの野生動物が住んでいるんです。
鬱蒼としたジャングルに目を凝らすと、右側にサイチョウが留まっている木があります。
『ジャングルクルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション』でも登場していますね。
実は、ライオンキングに登場するザズーもサイチョウの仲間なんです。
サイチョウは、東南アジアに生息する鮮やかな鳥。クチバシの上の『カスク』というツノが印象的ですね。
このカスクは『赤い象牙』と呼ばれています。富裕層の人気が高いため密猟が後をたたず、絶滅の危機に瀕しているのです。
(R)スティルウォーター・ジャンクション
さて、ウエスタンリバー鉄道は、熱帯雨林のジャングルを抜けてアメリカ西部に向かいます。
右手にある小さい駅は、スティルウォーター・ジャンクションといいます。
開拓者たちは、ここで蒸気船や駅馬車に乗り換えると、フロンティアを目指してさらに旅を続けるんですよ。
しばらくジャングルを進むと見えてくるのが、スティルウォーター・ジャンクション。
ゴールドラッシュに沸いたアメリカ西部。一攫千金を夢見る開拓者たちが機関車を降りて、蒸気船や駅馬車に乗り換えていた駅がスティルウォーター・ジャンクションでした。線路には車掌車(カブース)が残されています。
駅の中にはチケットオフィスや電報局があるようですが、今となっては通過駅となっています。
左奥には、蒸気機関車に水を補給する給水塔と風車が見えますね。
(R)アメリカアカシカ
ネイティヴ・アメリカンにとって、シカは食糧である以上に重要な存在でした。アメリカアカシカのオスは、力・勇気・精力・性愛の象徴とされていたのです。
アメリカ西部に暮らすスー族では、男子は成人すると長寿を願ってこのシカの『歯』を与えられていたといいます。
また、アメリカアカシカのオスが夢に出ると、男子は求婚用の服にその絵を描くことを許されたそうです。
(R)燃える家
おっ、河の向こう、小屋が燃えています。
開拓者の夢が灰になってしまいましたね…
しかし、フロンティアスピリットが燃え尽きることは決してないでしょう。
マーク・トウェイン号からも見える小屋です。
かつて、ウエスタンリバー鉄道のアナウンスでは『盗賊やインディアンの襲撃』によって火をつけられたとされており、小屋には矢も刺さっていました。
(R)インディアンの村
おや、
インディアンの部族がキャンプをしてますよ。
ほらほらほら、子供たちが皆さんを歓迎して外に出てきています。
インディアンの言葉で、『我々は仲間だ』ということをミタクエ・オアシンというんですが、こっちも手を振ってみましょうかね。ミタクエ・オアシン!
ティーピーという移動式住居で暮らしており、狩猟のためバッファローの群れなどを追って生活していました。
この村のネイティヴ・アメリカンたちは、スー族をモチーフにしているようです。
スー族は、他部族との衝突・白人の入植によってアメリカ西部の平原地帯へ移動することを余儀なくされました。
1830年のインディアン移住法によって、全てのネイティヴ・アメリカンは居留地に定住させられ、スー族の文化は壊滅。
さらにアメリカ政府は、インディアン寄宿学校で強制的に同化教育を行い、アイデンティティを奪いました。
また、この村に住むネイティヴ・アメリカンたちの着ている『インディアンのステレオタイプ*2』のような羽飾り付きの冠や鹿皮のシャツは、スー族の正装の姿です。
(R)トムソーヤ島
迷路のような洞窟があったり、回転する大きな岩やお城の形をした岩があったり。
トムソーヤ島は、まさに自然が作り出した冒険の島です。
ミズーリ州出身の作家、マーク・トウェインの作品『トム・ソーヤーの冒険』をモチーフにした島。
ミシシッピ川のほとりの小さな街で、ハックとトムが繰り広げる冒険を描いた児童文学作品です。
車窓からも見えるサムクレメンズ砦は、マーク・トウェインの本名にちなんでいます。
(R)プレーリー・ドッグ
あー、右手にいるリスみたいな小さい動物。
あいつは、プレーリードッグといって、
西部ではあちこちで見かけるんですよぉ。
どんなにタフな開拓者だって、
あの小さくて、かわいい動物を見たら、
おもわずにっこりしちゃうでしょうねぇ。
マーク・トウェイン号からも、滝の流れる岩山に暮らす別の群れを見ることができます。
オス1匹・メス数匹のコテリーという群れを作って、牧草地帯に巣穴を掘って暮らしているリス科の生き物。
畑を荒らしたり、掘った穴で家畜が骨折したりするため、実際には掃除機や毒ガスを使って駆除されることが多いのです。
(L)スプラッシュ・マウンテン
左の方に滝が流れている山が見えますか?
あれが有名なスプラッシュ・マウンテンです。
ここ、クリッターカントリーには、
森の小さな動物たちがたくさん住んでいるんですが、彼らは自分たちの力でこの土地を開拓したんですよぉ。
(R)ウエスタンランド
ほーら見てください、
賑やかな西部の街が広がってます。
カウボーイや牧場主、それに多くの開拓者がこの街に立ち寄って、生活に必要なものを買ったり、食事や音楽を楽しんだりしてるんですよぉ。
(L)ビッグサンダー・マウンテン
みなさん、このへんで一番大きな金鉱、
ビッグサンダー・マウンテンに近づいてきました。
ここでは、金が見つかってから、なぜか奇妙な事故が次々に起こるようになってねぇ…
今ではよっぽど勇気のある開拓者しかこの山に入ろうとしません。
(R)ダスティベンド・デポ
ウエスタンリバー鉄道には、3つ駅があります。
ゲストが乗降するウエスタンリバー鉄道駅、
スティルウォーター・ジャンクション、
そしてもう一つがダスティベンド・デポです。
アナウンスでも触れられないため、知らない方も多いのではないでしょうか。
では、どこにあるのでしょう。
左側にビッグサンダー・マウンテンの間欠泉や恐竜の骨が見えているタイミングで、右側で見ることができます。
ウエスタンランドのキャンプウッドチャックキッチンの2階にあたります。
(L)ガラガラヘビとロードランナー
ロードランナーに襲われているガラガラヘビが音を出して威嚇しています。ビッグサンダー・マウンテンに響くガラガラヘビの音はここから…?
ガラガラヘビは、北アメリカ〜メキシコに36種類が生息しています。尻尾の先の器官を毎秒50回も震わせることで音を立て、相手に毒があることを警告しています。
いっぽうのロードランナー(オオミチバシリ)は、ルーニー・テューンズに登場するロード・ランナーのモデル。時速36㎞/hものスピードで走ります。
(L)セドナ・サム
ビッグサンダー・マウンテンの間欠泉を過ぎて、小屋が見えてきたころ。下を見てみると、釣りをしているおじいさんがいます。
この人は、かつてビッグサンダー・マウンテンで現場監督をしていたセドナ・サム。
採掘中の岩崩れで生き埋めになったサムを掘り起こして助けた、愛犬ディガーと釣りを楽しんでいます。
(R)太古の世界
それではこれから、さらに時間を遡って
みなさんをある特別なところにご案内することにしましょう。息をひそめてどうぞお静かに。
1940年公開の『ファンタジア』にも登場した恐竜たちが暮らしています。
映画公開当時の学説に基づいたデザインのため、現在の考古学からすると復元ミスがあったりしますが…
・エダフォサウルス
…恐竜より先に絶滅した、恐竜とは異なる生き物。
・ブロントサウルス
…1960年代まで水辺に棲息すると思われていた。
・プテラノドン
…実は重いものはつかめない。
・トリケラトプス
…洞窟の入り口に化石が置かれている。
・ストルティオミムス
・T.レックス
…ビッグサンダー・マウンテンの化石の主かも?
・ステゴザウルス
時を超える蒸気機関車たち
ウエスタンリバー鉄道で走っているのは、実際に蒸気の力だけで動く、本物の蒸気機関車。
運良くいちばん前の席に座ることができたら、発車前に機関士が給水塔から炭水車に水を入れているのが見えるかもしれません。
灯油(オープン当時は重油)を燃やすことで、熱された水が高温高圧の蒸気になってピストンを動かします。その力が車輪に伝わって列車が進むのです。
なんと、ルートを1周するのに2,000ℓもの水を使うんだとか。
西部開拓時代の機関車
ウエスタンリバー鉄道の蒸気機関車のモデルとなったのが、『デンバー&リオ・グランデ鉄道』の1871年型蒸気機関車、モンテスマ号。機関車と炭水車の繋がったテンダー型。
煙突のカタチはダイヤモンド型。薪を燃料にしていた西部開拓時代、火の粉が飛び散らないように生み出されたものです。
また、前面下部にはカウキャッチャーがついており、荒野を走るアメリカ西部では線路の上に大型の動物がいることが多く、これを避けるために装着されていました。
それぞれの車両は福島県の協三工業が手掛けました。本体はもちろん、部品に至るまで手作りされており、組み立ても熟練した技術者による手作業で作られています。
そのため、それぞれ性格が異なるんだとか。
ウエスタンリバー鉄道の機関士によると、「リオ・グランデ号とコロラド号は素直で聞き分けがいい。ミズーリ号は、気の弱い女の子という感じでデリケート。ミシシッピ号はじゃじゃ馬だね(笑)」とのこと。
汽笛の音、蒸気の音が機関車によって違うため、乗り比べ、聞き比べをするのもおもしろいかもしれませんね。
進化し続ける鉄道
ウエスタンリバー鉄道は、1983年の開園時から東京ディズニーランドを走り続けています。ですが、現在と同じルートを走っていたわけではありません。
1987年にビッグサンダー・マウンテン、
1990年にスティルウォーター・ジャンクション、
1993年にスプラッシュ・マウンテン
がオープン。逆に何が見どころだったんだ、というくらい今と見える景色は大きく違っていました。
アナウンス
開園時から1999年まで、アナウンスを担当していたのは村山明。JR京葉線やJR埼京線で流れる、駅の自動アナウンスでお馴染みです。
当時は他のアトラクションの紹介をする意味合いが強く、あまりウエスタンリバー鉄道のストーリーは重視されていませんでした。
しかし、1999年からは青野武*3によるアナウンスに変更されました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドク(クリストファー・ロイド)の吹替を担当されていたこともあり、時間を超える機関車にはぴったり。現在も西部アメリカを巡る旅の案内をしてくれています。
スポンサー
開園時から2006年まで、トミカやプラレールで知られるトミーがスポンサーを務めていました。
ところが、2006年にリカちゃんやチョロQを主力商品とするタカラと合併。改めてタカラトミーとしてスポンサーに復帰しました。
ディズニーランド鉄道
ウエスタンリバー鉄道のモチーフとなったのが、アナハイムのディズニーランドを走る『ディズニーランド鉄道』です。
自宅の裏庭に小さな蒸気機関車を走らせるほど、鉄道好きだったウォルト・ディズニー。テーマパークを作るきっかけになったのも鉄道でした。
1955年7月17日、ディズニーランド開園と同時にオープン。園内をぐるりと1周しており、
❯メインストリートUSA・ステーション
❯ニューオーリンズスクエア・ステーション
❯トゥーンタウン・ステーション
❯トゥモローランド・ステーション
の4駅が設置されています。
最後尾には、ゲストは乗ることのできない特別な車両『リリー・ベル号』があります。もともとはウォルト・ディズニーのプライベート車両でした。
今では、ウォルトと妻リリアンの写真が飾られており、今もディズニーランドを見守っています。
フォード・マジック・スカイウェイ
「太古の世界」のジオラマは、もともと1964年の「ニューヨーク万国博覧会」のパビリオン『フォード・マジック・スカイウェイ』で展示されていたものでした。
フォードの新型車初代マスタングに乗って、恐竜の時代から石器時代までの歴史をたどるアトラクション。ウォルト・ディズニー自らナレーションを務めていました。
ウォルトは、万博終了後にディズニーランドへそのまま移設する予定でした。
ところが、フォード社の許可が得られず恐竜のオーディオアニマトロニクスのみがジオラマとして移設されることになったのです。
なぜ駅は1つだけ?
ディズニーランド鉄道はもちろん、東京ディズニーシーのエレクトリックレールウェイにも2つの駅があり、ゲストの移動手段となっています。
では、なぜウエスタンリバー鉄道だけ降りられる駅が1つしかないのでしょうか。
それは、当時の法律*4では2つ以上の駅を作ると『鉄道事業』とみなされ、運賃・時刻表を設定しなければならなかったからです。
ゲストから運賃を徴収することは避けたかったオリエンタルランド。1駅の環状輸送にせざるを得なかったのです。
ところが、後に法律*5が改正されたため、2001年オープンの東京ディズニーシーのエレクトリックレールウェイは2つの駅を繋ぐことが出来たのです。
ディズニー・マジック
ウォルト・ディズニーの手掛けた最後のアトラクション、『カリブの海賊』。ウォルトは、WEDエンタープライズのイマジニアにこう言いました。
ゲストが一度に見られないほどのものを置きなさい。 そうすれば、ゲストは何度でもここに戻ってくるよ。
このウォルトの教えは、今でもディズニーテーマパークに息づいています。アトラクションに乗ってからはもちろん、乗るまでの待ち列にもたくさんのストーリーがあるのです。
さて、今回もディズニーがアトラクションに隠したストーリーの魔法をいくつかご紹介しましょう。
発車アナウンスと制服
Your attention please.
The Western River Railroad is now arriving at the station.
Passengers, please stand by to board.ご案内いたします!
まもなくウエスタンリバー鉄道が到着いたします!
どなた様も、お早めにお支度くださいませ!
ウエスタンリバー鉄道のキャストの制服を見てみると、車掌は黒いスーツ、機関士は青い作業服を着ています。
これらの制服は、19世紀〜20世紀初頭のアメリカ西部でポピュラーだったものです。
Your attention please. The Western River Railroad is now boarding passengers for a scenic journey through tropical jangles and the great American west. All aboard!!
ご案内いたします!
ウエスタンリバー鉄道は熱帯のジャングル、
開拓時代のアメリカ西部をめぐる旅に
まもなく出発いたします!
どなた様も、乗り遅れのございませんよう、
お願いいたします!
また、発車時のアナウンスも19世紀のアメリカ西部で実際にアナウンスされていた内容だそう。
Your attention please.
This is the last call for the Western River Railroad.
Last call. Board!!乗客の皆様に最終のご案内を申し上げます!
ウエスタンリバー鉄道は間もなく出発いたします どなた様もお急ぎご乗車をお願いいたします!
サファリ・トレーディング・カンパニー
ウエスタンリバー鉄道を運営しているのは、『サファリ・トレーディング・カンパニー』。もともとこの会社、アドベンチャーランドでの交易とカヌーによる運送業を生業としていました。
運送業が軌道に乗ったため、1927年には子会社・『ジャングル・ナビゲーション・カンパニー』を設立。カヌーから小型貨物船に乗り換えることに成功しました。
1930年代に入ると、社長はアメリカ大陸横断鉄道がジャングルのそばを通るという噂を耳にします。事業拡大のまたとないチャンス。
そこで、貨物船ドックの2階に駅舎を作り、湿地帯を避けるため高架にレールを敷きました。
その甲斐あって、鉄道輸送は大成功。遠く離れたインドやアフリカとも貿易を行うようになりました。ですが、小型貨物船の役割が失われるように。 そこで、観光客向けにクルーズツアー・『ジャングルクルーズ:ワイルドライフ・エクスペディション』を始めたのです。
Dr T.Baxter
ビッグサンダー・マウンテンを過ぎて、洞窟に入る寸前。金の採掘中に発見されたであろう、トリケラトプスの化石が置かれています。
そのそばに置かれている赤い工具箱には、
との表記が。
このトニー・バクスターというのは実在した人で、ビッグサンダー・マウンテンやスプラッシュ・マウンテン、スター・ツアーズを手掛け、ウォルト・ディズニー・イマジニアリングの副社長も務めたディズニー・レジェンドです。
彼の功績を讃えて設置されたのです。
スティルウォーター・ジャンクション
いまや通過駅となってしまったスティルウォーター・ジャンクション。駅舎の中を見ることはできませんが、特別にご紹介します。
黒板に時刻表が書かれています。
WESTLD(ウエスタンランド)
SPLMTN(スプラッシュ・マウンテン)
BTM (ビッグサンダー・マウンテン)
✑利用制限
おタバコはご遠慮ください。
煙を吐くのは機関車の役目です。
ウエスタンリバー鉄道には、エレベーターが設置されています。そのため、車椅子に乗られたゲストの方も安心して機関車に乗ることができます。
✑攻略法
ウエスタンリバー鉄道は、ファストパスの導入されていないアトラクションです。
比較的少ない待ち時間で乗ることができますが、1周15分ほどかかるため、タイミングによっては前の機関車が出発してから待つこともあります。
夜は運行本数が減るため、注意したほうがいいかもしれません。